由禧(よしき)先生
吊るし人
2026/01/15 21:38:30
――「軽くなる」ことを誤解しないために
タロットの12番「吊るし人」は、長いあいだ「忍耐」や「自己犠牲」のカードとして説明されてきた。
けれど最近、このカードを見ていると、もっと別の層の意味が立ち上がってくる。
それは
「高周波になろうとする意識を、低周波の肉体に一時的に縛りつけている状態」
という捉え方だ。
吊るされているのは罰ではない。
逃げられないように縛られているのでもない。
むしろ逆で――
一気に上へ行ってしまわないように、肉体側が意識を引き止めている状態。
高次へ向かう直前の、極めて繊細で危うい「間(あわい)」のフェーズ。
それが吊るし人なのではないか、と思う。
◇蜘蛛の糸の物語と、周波数の話
芥川龍之介の『蜘蛛の糸』は、子どもの頃に読むと「欲を出すと落ちる話」に見える。
でも大人になって読み返すと、もっと残酷で、もっと繊細な物語だと気づく。
地獄に落ちたカンダタは、たった一度の善行によって、極細の蜘蛛の糸を垂らしてもらう。
彼は必死に、上へ、上へと登っていく。
もしこの物語を「周波数」という視点で見るなら、
蜘蛛の糸とは 高次と低次をつなぐ、唯一の共鳴ライン だ。
糸が細いのは、意地悪だからではない。
軽い周波数しか通れないから だ。
本当の問題は「下から来たこと」ではない
よくある解釈では、
「下から他の罪人が登ってきたから切れた」
とされる。
でも、ここで重要なのは人数でも重量でもない。
下から這い上がってきた「死者」とは、
実は カンダタ自身の低周波 だったのではないか。
不安
恐れ
罪悪感
「自分だけ助かりたい」という焦り
他者を切り捨てたい衝動
それらはすべて、彼の内側に元々あったものだ。
外から引っ張られたのではない。
自分の中の重さが、共鳴して追いついてきただけ。
振り払おうとした瞬間、周波数は落ちる
決定的なのは、カンダタがこう叫ぶ場面だ。
「この糸は俺のものだ。降りろ!」
この瞬間、彼は「軽くなろう」としたのではない。
「重いものを捨てよう」とした。
けれど、
本当の意味で軽くなることと、
無理やり切り捨てることは、まったく別だ。
恐れや罪悪感を
「邪魔だから排除しよう」
「こんな感情は低級だ」
と否定した瞬間、周波数は逆に落ちる。
それらを抱えたまま、
それでもなお上を見続けることの方が、ずっと軽い。
◇吊るし人は「燃える前」の姿
吊るし人の次に来るカードは「死神」。
そしてその先に「節制」「星」「月」「太陽」と続く。
吊るし人は、
まだ燃えていない薪 のような状態だ。
・燃えれば軽くなる
・煙になれば上へ昇る
・でも、今はまだ肉体がある
だから、縛られている。
これは罰ではない。
準備期間 だ。
自分の中の低周波を
無くそうとしなくていい。
切り捨てなくていい。
振り払わなくていい。
ただ、
「一緒に連れて行く」
それだけでいい。
◇軽さとは、排除ではなく統合
本当に高く、軽い周波数とは、
何も持っていない状態
ではなく
すべてを認めた上で、執着しない状態
だ。
吊るし人も、蜘蛛の糸も、
教えてくれているのは同じことかもしれない。
「上へ行く条件は、清らかさではなく、誠実さだ」
ということを。
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